一般社団法人農福連携自然栽培パーティ全国協議会では、全国の障がい者施設を対象に、農業、特に自然栽培の普及活動を行っています。農業を通じて障がい者の皆さんの賃金と就労意欲・技術を向上することが第一の目標。そして、この普及活動を通じて全国の耕作放棄地を再生し、地域コミュニティと循環型農業を再生することが第二の目標です。
私自身は松山市で就労継続支援B型の施設を経営し、農業とカフェの運営を行っています。就労継続支援B型とは、障害者総合支援法に基づく施設で、今すぐ一般企業に就職することが困難な障がい者の皆さんに、就労機会と知識・能力の向上に必要な訓練などを提供する施設です。しかし、全国のB型事業所で働く障がい者の、1人当たり月額工賃は平均1万4千円に過ぎません。彼らの経済的自立を支援するには、少なくとも毎月5万5千円程度の収入を保証できる施設運営が必要です。その手段として、私は農業に着目しました。
十数年前に障がい者の就労支援施設を見学したとき、障がいの程度はさまざまなのに、全員が同じ単純作業に従事していることに違和感を覚えました。それよりも、青空の下で農業に従事すれば、1人1人の能力を伸ばせるのではないかと考えたのです。慣行栽培から始め、すぐに農薬や除草剤の使用に疑問をもつようになり、いろいろ調べて「奇跡のりんご」で有名な木村秋則さんに辿り着きました。お会いして話を聞き、助手として木村さんの全国行脚に同行して勉強させていただき、自分でも自然栽培を始めたのが10年前のこと。現在は3万3千坪の田畑で年間80種類の野菜、果実、米を栽培し、障がい者スタッフ20人に働いてもらっています。