コシヒカリから生まれた新品種「みどり豊」

育種家としての経歴

私はかつてサントリーに勤務し、育種家として多くの花を生み出しました。なかでも「サフィニア」(ペチュニアの品種)はガーデニングブームの火付け役として世界的に有名になりました。この経験を生かそうと思い、独立して滋賀県彦根市の自宅で花の品種改良をはじめ、150を超える新品種を世界に送り出し、年間販売量は5000万本に達しました。

コシヒカリの突然変異「みどり豊」

育種家だった私が、今は米づくりに取り組んでいます。きっかけは大学時代の親友との再会でした。彼は福島県で、たった2本のコシヒカリの突然変異を発見したのです。その突然変異から生まれた新品種「みどり豊」は、コシヒカリよりも優れたお米だとわかり、普及を手伝うことになりました。

コシヒカリは全国に知られた人気品種ですが、近年は温暖化の影響で、地域によっては品質のよいコシヒカリの生産が難しくなっています。というのも、籾殻の中で米の粒が成長する登熟期には、 涼しいほうがお米が美味しくなるのですが、西日本では夏の高温期に重なるため、味や品質が落ちやすいのです。

コシヒカリに比べ、登熟期が2週間ほど遅れる「みどり豊」ならそれを回避でき、茎が弱く倒れやすいコシヒカリの欠点も解決します。「みどり豊」はコシヒカリに比べると背はやや高いのですが、剛直で倒れにいのです。そして、粒がやや大きめでツヤがあり、素直な甘みと、モチモチの食 感で冷めても美味しいお米です。

5年をかけて均一性と安定性を確認して種苗登録を申請し、平成21年の第11回米・食味分析鑑定コ ンクール国際大会で特別優秀賞を受賞すると、少しずつ知名度が上がりはじめました。その後も、 平成23年度、25年度、26年度に米・食味分析鑑定コンクール国際大会で特別優秀賞を受賞してい ます。

私はこの「みどり豊」をたくさんの人に食べてほしいと思い、農業生産法人あぐりきっずを設立 し、「みどり豊」の生産をはじめました。滋賀県東近江市の水資源に恵まれた豊かな環境のもと で、3人で5ヘクタールの米づくりを行っています。私が代表を兼任している有限会社フローラトゥエンティワンが「みどり豊」の種籾を供給し、あぐりきっずでお米の生産をしています。

新品種「オウミ木イチゴ」

また、あぐりきっずでは、お米のほかに新品種「オウミ木イチゴ」も生産しており、滋賀県内の和 洋菓子店でタルトやムースなどに使われ始めています。「オウミ木イチゴ」はすべて無農薬・無化学肥料で栽培しており、色鮮やかで艶のある輝きをもち、普通のラズベリーよりも甘酸っぱい風味です。

あぐりきっずの想い

あぐりきっずという社名には、「いつまでも子供のような好奇心を持って農業がしたい…」という想いを込めました。新しい品種や栽培方法にチャレンジしながら、楽しい農業を目指しています。

現在は関東中心に販売している「みどり豊」や、滋賀県内で販売している「オウミ木イチゴ」を、 今後は全国の皆様に食べていただきたい。試行錯誤をしながら、生産・販売の規模を拡大していきます。

メッセージを送る

参加農家のトピックス