生姜のスイーツで人も地域も元気に!

アグリグラム

サラリーマンの家庭から歴史ある農家に嫁いで20年

長崎県内で最も農業が盛んな島原半島。その中でも島原市の三会地区は、火山灰の肥えた土壌で、昔から生姜をはじめ根菜類の栽培が行われている。今回、お話をお聞きした松本綾子さんは、その三会地区で江戸時代から続く農家に嫁いで約20年。

4代目になるご主人と二人三脚で農園を切り盛りしながら、女性ならではのセンスを生かし、加工品の開発に取り組んでいる。

綾子さんは長崎市内の出身。サラリーマンの家庭で育ったが、長崎県立農業経営大学校に進学したことで、農家の跡取りである今のご主人と知り合い、卒業後は一時福祉の仕事に就いたが、24歳の時に結婚した。島原に嫁いで来た頃は、農業にも慣れず、知り合いも友達もいない淋しい日々が続いたが、義理のご両親が綾子さんに野菜ハウスを2棟任せてくれたことをきっかけに、農業にやりがいを感じるようになったという。

「ハウスで作ったキュウリを自分で収穫して、直接市場に持って行くことで収入にもなるし、いろんな方と関われることで毎日が楽しくなりました」と当時を振り返る。子供ができてからはお母さん同士のつながりもでき、島原の土地にも馴染んでいった。

島原の生姜を広めたいその思いがスイーツになった

現在、松本農園の畑は4㌶。ゴボウ、ニンジン、ダイコンなど季節の野菜も生産しているが、全体の半分を生姜が占める。代々受け継いできた栽培法に新たな工夫を加えながら生産される松本農園の生姜は、香りがよく、実が柔らかくジューシーで繊維も少ない。近年の生姜ブームもあり、インターネットをはじめ、関東・関西のメーカーやショップからも注文が相次いでいる。

「火山灰でできた土壌はほくほくと柔らかいため、根もの野菜がよく育つ。また、水はけが良いから雨が降っても翌日は農作業ができるんです。手をかけるほど作物は元気に育ちます」と、収穫に汗を流すご主人も、大ぶりで瑞々しい、見るからに元気な生姜に笑みがこぼれる。

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さらに、その良質な生姜を利用して話題になっているのが、生姜プリンをはじめとする生姜を使った加工品だ。きっかけは「平成23年度JAご当地スイーツコンテスト」。綾子さんは島原の生姜をアピールするチャンスだと思い、当時、島原農業高校食品科の2年生だった次男と一緒に試行錯誤を重ねた。そして完成したのが「プリンdeしょうが」。

生姜の風味がきいた上品な甘さのプリンは、シャレのきいたネーミングも評価を得て、見事、最優秀賞に輝いた。それを機に「うまかdeしょうが」を商標登録し、松本農園の加工品づくりも本格的にスタート。自宅の敷地に加工所を建設し、現在はプリンのほか、パンナコッタ(平成24年度島原市特産品新作展で最優秀賞)やシロップ(同展優秀賞)、ジャム、味噌などを作っている。近隣の直売所や福岡のデパートなどでも販売するほか、イベントにも出店し好評を博している。

売り上げアップをめざし子供たちに夢を託す

現在の課題は、今の加工所では手狭になってきたことと、菓子製造で加工所の許可をとっているため、商品の新規開発に制限があること。「売上が伸びてきたら加工所を広くし、さらに本格的にやりたい」と今後の展開を模索中だ。

3人の子供さんは現在それぞれ進学して家を出ているが、将来的には松本農園で働きたいと話しているという。長男は明治大学に籍を置き、ドイツの農業コンサルティングの会社でインターン中。次男は服部栄養専門学校で料理を学んでおり、お兄さんが育てた野菜で料理を作るのが夢。

綾子さん自身も、東京に本部がある「農山漁村女性活動支援協会」に所属し、3年前にはヨーロッパ研修にも参加。また、農林水産省が主導する「農業女子プロジェクト」にも参画し、今後は自らの経験を生かし、女性の視点で農業を元気にする活動を行いたいと意欲を燃やしている。

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