農薬・化学肥料を使わない米づくり

新しい農業との出会い

 新潟県長岡市は日本有数の豪雪地帯で、ミネラル豊富な雪解け水と寒暖差が、米づくりに最適な環境を与えてくれます。米は自然と一緒に作るものですから、水稲栽培においては、自然環境や稲の成長に心を傾け、耳を澄まし、よく見ることが大切です。
 私たちは農薬や化学肥料を使わない米づくりを行っています。有機質肥料を使って土づくりを行い、田植えの際には専用の田植え機で、紙を敷きながら苗を植えます。この紙が日光を遮断し、雑草の成長を抑制してくれるので、除草剤などの農薬を使わずに米づくりができるのです。私たちがつくるコシヒカリは有機JAS認証を取得しています。

 こうした米づくりを始めたきっかけは、あるお客様からの一声でした。「農薬も化学肥料も一切使わない米をつくってほしい」。しかし、当時の私は「コストがかかるし、技術的にも無理です」と、簡単に断ってしまいました。その後、あっさり「できません」と答えてしまった自分に腹が立ってきて、自分は何のために農業をしているのか、深く自問させられました。思い切ってやってみようと試行錯誤を始め、1年半をかけて、農薬を使わない栽培方法を見出しました。それは私にとって、新しい農業との出会いでした。

米づくりを次世代につなぐ農業経営

 私は30歳で社長になりました。それは、一人前の米農家になるには30年かかると考えたからです。自分が60歳になるまでに社員を育て、米づくりを次世代につないでいく、そんな農業経営をすることが理想です。
 幸い、弊社では20代、30代の社員6名が働いてくれています。若い彼らには米だけでなく、野菜もつくってもらっています。社員一人一人に担当の畑を持たせ、さまざまな野菜の成長過程と栽培方法を学んでもらう。これは単なる社員教育ではなく、農業に魅力を感じ続けてもらうためのミッションでもあります。また、弊社では甘酒ドリンク「米みるく」などの加工商品も開発・販売しており、その商品管理、販売促進、受注から発送まで、営業的・事務的な業務も若い社員に任せています。いろいろなことに挑戦して、失敗も経験しながら一人前になってほしいですね。

 農業経営には、悪天候による農作物の生育不順や自然災害など、さまざまなリスクが伴います。それらのリスクを最小限に抑え、経営効率を上げるために、ITも導入しています。具体的には稲の生育診断、コスト分析、農業簿記などに活用していますが、このうち農業簿記のソフト開発には、私自身も関わりました。圃場の管理、売上・仕入・収支管理のIT化によって、圃場から声が聞こえるようになった気がします。こうした効率化のノウハウも、未来の農業を担う若い世代に伝えていきたいと思っています。

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