義一さんが中心となって、お茶としいたけの二本立てで栽培をしてきた中、香織さん自身は29歳の時に就農。東京の大学を卒業後、採用のコンサルティング会社、PR会社で働いたキャリアを持つ女性だ。「PR会社にいたからといって、特にPRがうまいわけではない」と言うが、都内のレストランと一緒にしいたけとワインを楽しむイベントを仕掛けたり、貫井園のホームページとは別に、フレンチシェフ考案のしいたけレシピなどのコンテンツが楽しめるウェブサイト「Hugkumはぐくむ」を手がけるなど、女性ならではの視点でしいたけの新しい魅力を世の中に伝える手腕には、目を見張るものがある。
そんな香織さんのアイデアの一つが加工品だ。「原木しいたけ」というだけで、品質保証は折り紙つき。レストランだけでなく、昨年から都内の有名デパートの中元・歳暮でも貫井園のしいたけを使った商品の扱いが始まった。そんな引く手数多のニーズに応えるためには、生産量を上げる必要があるが、設備や環境が必要になってくるので一朝一夕には実現できない。
では、限られた生産量をどこに振り分けていくか、どういうものを作っていくかという問題になってくる。そういう中で、加工品には手応えを感じるという。例えば、干ししいたけを生産する際に出る、乾燥したしいたけの軸。これまでは捨てるだけだった部分をパウダーに加工することで、ムダが出ない上に、生しいたけを求める消費者とは違う新たなユーザーを開拓できる商品へと変化したのだ。