「今はどこからでも取り寄せができるほど便利な時代。だからこそ、生産者と消費者で顔の見える関係を築いていきたい。もっと気軽に産地を訪れて、生産者と直接触れ合える機会を提供したい」と、今後の抱負を語る山下さん。
デザイナーや設計士を集めてプロジェクトチームを立ち上げ、じっくりとプランを練り上げてオープンした「桃農家Cafe ラ・ペスカ」は、オープンから6年、自家栽培のフルーツを使い、自社で加工したジェラートを提供。「『本当に美味しいものが食べたい』と思った時に足を運んでもらえる場所でありたい」と力強く語る。
さらに、今年から都内の大手スーパーチェーンと連携し、店舗から出る野菜くずで作った肥料を桃の栽培に利用し始めた。収穫した桃は全量を提携先のスーパーが買い取る「食品リサイクル・ループ」への参画と同時に、スーパーが募集する「食育体験桃狩りツアー」を受け入れ、消費者の農業への関心を高めるとともに、山梨のフルーツの魅力を広く伝えていく試みも行っている。
「生産者として、経営者として、事業を起こすには、チャレンジする機会を逃してはいけない」と語る山下さん。新たな農業のスタイルを確立しようと、自ら畑に立ちながらも常に想像力を膨らませ、飽くなきチャレンジ精神を貫きながら、果樹の一大産地をリードし続けている。