リンゴ生産量日本一を誇る青森県弘前市で、美味しさを強みに6次産業化を進める農園がある。それが「タムラファーム」だ。約10㌶の畑で11品種のリンゴを栽培しており、消費者の手に入りにくい紅玉を弘前市一の規模で生産している。
代表取締役である田村昌司さんは、もともと大手青果市場でリンゴやリンゴジュースの営業を担当していたが、全国のスーパーを回ると、バイヤーから「青森産よりも長野産の方が美味しい」という声を聞かされていたという。
その原因は流通にあった。当時の卸売市場は出荷の集中による価格下落を防ぐため、産地ごとに出荷時期を調整。都市圏への輸送距離が短い長野産は、完熟に近い状態で先行して取引されたが、輸送距離が長くなる青森産は後回しにされた。市場での在庫期間が長くなることから、青森の生産者は「味よりも日持ち」を求められ、実が青いうちに収穫して出荷していた。田村社長は「完熟した美味しいリンゴを出荷し、流通を変えよう」と決意。1989年30歳でリンゴ農家へ転身した。